まず、そいつ(探偵用語では対象者と言うらしい)の会社帰りからの尾行調査から始めた。俗に言うところの素行調査。毎晩の様に新宿の客席が30席程の然程、大きくもないチャイニーズパブへ通っているとの事。そこで、探偵さんがその店へ客を装って潜入し、その店の常連客となった。(こう言った潜入調査はこの探偵さんの得意分野らしい)探偵さんが通ってから3日も経たないうちにそいつと顔見知りとなり、店で会うと「よ!」と声を掛け合う仲になり、隣合わせの席になるともうほとんど、一緒に飲んでいるかの様にまでの仲にまでなったそうな。探偵さんの言うには「酔うとホステスの言うままに、やれシャンパンだのフルーツだの。高級なテキーラだの」と。言われるがまま「よっしゃ!よっしゃ!」状態らしい。それも、お目当てのおとなしくて可愛い台湾出身の女の子が直接言うんじゃ無しに、この店の「チーママ」がやり手らしく。チーママが誘導してお金を使わせる気配が見え見えだが、遊び慣れていないそいつには全くその自覚が無いとの事。そこで、たまたまその探偵会社の姉妹店で大阪にある会社(イーグルアイ調査事務所)の代表が、在日台湾人で中華学校出身だった為に急遽上京してきてもらい。日本人の振りをして、時折ホステス同志が台湾語で話す内容を全て知らない振りをして解読。そこまでする必要が有るのかどうかは別にして。とにかく完璧に状況を把握したいのだそうだ。案の定、大阪の探偵さんの解読によると、他の客が来ても、そのお目当ての女の子が他の席へ呼ばれると、チーママがそこへ居残り。チーママが他の席に呼ばれると、その子を呼び戻して決して違う女の子で、まかなう事はさせない作戦であるとの事。しかし、いくら台湾語が分からないと言っても露骨なことは、決して言わない様に遠回しな言い方をしていているらしい。もしも、台湾語が分かる人間がいる事を警戒しているのだろう。そいつの給料は手取りで55万円程度。5年程前に家も買って、小学校6年生の娘がひとり。どれだけ多く見積もっても、そいつの自由に使える小遣いは7~10万円程度。そのチャイニーズパブの料金は一回、平均3~5万円。探偵さんの見立てでは、店が終わってからそのお目当ての女の子を連れて、寿司屋や焼き肉店にアフターで連れ出す事や帰りのタクシー代も試算して。最低でも月額60万円~70万円は使っている。そいつが店に来ていない時に探偵さんがチーママから聞いた話では、そいつが初めて店に来たのは7~8ヵ月程前。昔、何度か来た客と一緒に3人で来て、その後1ヶ月程経ってから一人で来店してから、2日に一度ぐらいのペースで来て居て。最近では来ない日の方が少ないとの事。因みに、全てお会計は現金。仕事は音楽会社の社長との事だが、仕事の話はほとんどしないとの事。まぁ、音楽関係は嘘じゃ無いが「社長って・・」このままでも、事実関係をまとめて貰えば十分に問い詰める事は出来るのだが、どうしたものか?刑事事件に発展させるのは可哀想だし。この事件の概要は。そいつの個人適な知り合いの社長が溺愛する娘をデビューさせたくて、デモテープを持って、うちの会社に来たのがきっかけ。一応、会社としてはオーディションを受けさせたのだが、製作部のプロデューサーの返事はNO。それを本人に会社から直接言えばよかったのだが、そいつから伝える様にしたのが間違いの始まり。そいつは、その社長にせがまれて色んな接待を受けてしまい。勝手にレコーディングスタジオを借りて、別のレコード会社のレーベルを付けて5000枚のCDをその社長に買取りをさせた。ひらたく言えば、自費出版にレコード会社のレーベルを付ける事でメジャーデビューと言う体栽を作る。この業界ではよくある話だ。だから、ウチの会社としては損害は無いのだが、利益も無い。うちで扱うかどうかは別にしても、うちの会社を飛ばして個人流用をしていたのだ。普通この手の手段を使って、金持ちの親ばかから湯水の如く金を使わせる手法は、音楽関係者でも一人で小さな会社を作っている、フリーの奴らの手法であまり褒められた行為では無い。それにこいつは、あくまでもうちの社員。内情が発覚すると、企業イメージは勿論のこと。そいつがその社長とどんな話をしているのか分からないが、事と次第によれば、うちの会社が訴えられる可能性もある。話をもどすが、そのチャイニーズクラブにそいつが来ていない時の調査で、某レコード会社の製作部長と、親ばか社長とそいつが福岡までゴルフ旅行に行っていたところを、探偵が押さえ。その某レコード会社からCDデビューする日も決まったところで。報告書をまとめてもらい。それを携えて、社長に話をした。社長はやはり「お前に任す」とのこと。覚悟は出来ていたので、そいつを会社の会議室に呼び出し、全て話をすると俯いたまま全てを認めた。その後、社長のところに一緒に行き。辞表を提出した、損害賠償請求や刑事告訴はしないかわりに、辞表は受け取らず、懲戒解雇となり、音楽業界とはこれから一切関わらないと云う事と今回の一連の事件は一切、会社とかかわりが無い事の念書を書いて。そいつは会社から去って行った。